乃木坂46「I see…」大人気の要因を考えます。

今回は乃木坂25枚目のシングルに収録されているカップリング曲「I see…」についての話題です。
この話題は前々回の続きとなります。まだ読んでいない方はぜひ。



この曲がいかに人気かという説明を付け加えておこうと思います。
上のブログでは表題曲「しあわせの保護色」との比較をしましたが、過去の表題曲とも張り合えるくらいまで再生数が伸びてきています。
今日時点の乃木坂公式YouTubeチャンネルで公開されているMVを再生数が多い順番に並べると以下の通りになります。

1位. インフルエンサー 6609万回
2位. シンクロニシティ 3942万回
3位. 帰り道は遠回りしたくなる 3300万回
(略)
9位. きっかけ 1511万回
10位. I see… 1428万回
11位. 逃げ水 1419万回
(略)

同程度再生されている曲は表題曲やアルバムのリード曲などもともとの注目度が違う曲ばかりで、1カップリングのこの曲がこの順位に入っていることは快挙です。
もちろん14枚目以前のMVはMV集発売の際にショートバージョンに編集され再生数がリセットになっているため単純な比較はできませんが、それでもこの曲の人気を示していることには変わりありません。

何がここまで再生数を伸ばす要因になったのか、考えていく前にまずはそのMVを貼っておきます。



好きな相手に自分から連絡してしまったら負けたような気がして、意地を張ってしばらく連絡をしなかった。
そんな状態で過ごしているとある日突然意地を張っている自分がばかばかしくなって、好きで会いたいその気持ちが一番大切なのだと気づいた。
4分半という時間がありながら結局言いたいのはたったこれだけなんですね。もともと他のアイドルに比べてシンプルな歌詞が多い乃木坂の楽曲の中でも1.2を争うわかりやすいメッセージ、これは大衆受けする曲を作るためには重要なことでしょう。

ちなみにこの曲の1人称は「僕」で、つまり男の目線からの歌詞になっています(ボクっ娘という可能性もありますがキリがないので男と仮定します)
乃木坂には一人称が「僕」である曲は他にもたくさんありますし、題名だけに限っても「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」、「僕が行かなきゃ誰が行くんだ?」、「僕がいる場所」、「僕だけの光」、「僕の思い込み」、「僕のこと、知ってる?」、「僕の衝動」と7曲も「僕」が使われています。
この女性アイドルに「僕」を歌わせるというのは乃木坂に限ったことではなく、秋元グループでは常套手段になっています。秋元グループの総本家であるAKBの有名どころでいえば、「ヘビーローテーション」や「フライングゲット」などもこれに該当しています。
大衆受けを狙えるシンプルな歌詞にしつつ、普段から乃木坂の曲を聴く人には違和感を与えないということが達成されているように感じました。

MVのほうはというと、歌詞の内容とは少し違ったものになっています。
エンドロールではメンバーたちが「黒子のボス」、「幹部黒子」、「素直になれた人々」として紹介されていて、大きく黒子サイドと一般人サイドで二分されていることがわかります。セリフが多用されるタイプのMVではないので正確に判断することはできませんが、0:51秒当たりでボスの指示によって曲が流されバスに座っていた一般人が踊りだすというシーンが見られます。それまではただバスに座り外に眺めていた人が黒子の指示によって笑顔で踊りだすというこの一連の流れで彼女たちが「素直になれた」というのなら、このMVにおける「素直になる」というのは自分の中の笑顔で踊りだしたくなるような楽しい気持ちを抑圧しないことである、というふうになります。この様子はカフェで雑談をしている3人やショッピングをしている3人でも見て取れます。
自分の素直な気持ちを押さえつけない、というテーマを前半の日常のシーンとラストの派手な演出の中満面の笑みで踊るシーンとのコントラストで表現することはMVにしかできないことで非常にいいと思います。

再生数という観点においてはコロナ禍の外に出られないという情勢も大きく影響したでしょう。
普段ならCDの発売後表題曲以外のMVはショートバージョンとして再編集されたものが公開されるところですが、この25枚目シングルはライブや握手会などが開催できない現状を鑑みて特例的に発売日以降もフル尺のMVが公開されているようです。1番までしか聞くことのできない過去の曲と、フルで聞くことのできる今シングルの曲ではどちらが多く再生されるかは明白です。そこにコロナで動画サイトを見る人の母数が増えたことも相まって爆発的な伸びが生まれました。
また、コロナ禍の暗い空気を打破するかのようなこのMVの明るい雰囲気も良かったのではないでしょうか。どんな人でも、どんな状況でも、可愛い女の子がニコニコしながらダンスをしている様子を見れば少しは気分が晴れるものです。同じ曲を歌うのでもデビュー間もないフレッシュな4期生だからこそ出せる雰囲気というのもありますし、4期生の側からしても圧倒的な人気曲を早い段階でゲットでき、曲とメンバーがwinwinの関係を作っているようです。

メッセージがスッと伝わってきて聞いているだけで明るい気持ちになってくる、シンプルですがメンバーの魅力で人を集めていくアイドル楽曲にとっては大切なことが「I see…」では達成されているのかもしれません。
ここでは特に触れませんでしたが、キャッチーなダンスも印象的な曲でライブができるくらいコロナが落ち着いた暁には振りコピなどでもう一旗揚げることになりそうだと予感しています。



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