今週末は無敗の二冠馬コントレイルが菊花賞トライアルの神戸新聞杯を使ってくるということで夏競馬の雰囲気が抜けなかった先週までとはまた一味違った雰囲気がしてきます。先週の競馬予想でも書いたようにGⅠや重賞を勝って賞金的に余裕のある馬はトライアルレースに使わないということがポピュラーになってきた現代、ここまで完璧な成績を積み上げてきた馬がこのレースに出ることは少し驚きすらあります。
また、今年は史上初めて牡馬三冠馬と牝馬三冠馬が同時に、それもともに無敗で誕生するのではないかという期待もかかっています。牡馬のほうは1941年にセントライトが達成して以来現在までに7頭が、牝馬のほうは1986年にメジロラモーヌが達成して以来5頭が達成していますが、未だに同一年に牡馬と牝馬の三冠馬が誕生したことはないのです。
実際2013年から競馬を見始めた私は三冠馬誕生の瞬間は2018年のアーモンドアイしか見たことがなく、長く競馬を見ている人ほどその難しさというのは身にしみて感じるのだろうと思います。
競馬歴6.7年の私がリアルタイムで見た馬の中で一番強いと思っているのが2015年の二冠馬ドゥラメンテです。
JRA公式YouTubeチャンネルで公開されている2015年皐月賞の映像です。
2着のリアルスティールが好位から残り200mほどで前をとらえて先頭に立つという直線の短い中山の正攻法ともいえる競馬で勝ちに行ったところを残り100mほどで外から強襲して勝ったのです。
ただでさえとんでもない勝ち方なのですが、単に道中後方にいたというだけではなく4コーナーで馬群を裁こうと外に出したところ過敏に反応して大きく外に斜行しています。レース後にデムーロは騎乗停止を食らっているようにこれ自体は褒められたことではありませんが、広いコースに比べて直線一気が決まりにくい中山で4コーナーのアクシデントさえも乗り越えて差し切る内容は後にも先にも見たことがありません。
ダービーも当然のように圧勝し、菊花賞に進めば確勝級の扱いを受けるはずだったドゥラメンテでしたが、ダービー後重度の骨折が判明し翌年2月の中山記念まで休養を余儀なくされたのでした。
初めて三冠馬誕生の瞬間が見られると期待していた当時中学生の私は心からガッカリしたものです。
これほどの馬でも順調に行かなければ三冠馬にはなれないということを知り、三冠を達成した馬の偉大さを改めて実感したのが2015年の牡馬クラシックでした。
私は基本的に1番人気になることが予想される馬はまず疑ってかかるようなひねくれた人間で、今年のGⅠで1番人気に◎を打ったのはヴィクトリアマイルのアーモンドアイとダービーのコントレイルだけです。逆に言えばそれだけ皐月賞を見てからはコントレイルの地力というものが世代の中で一枚抜けていると評価していたのです。
そのような馬が無事に秋シーズンを迎えてくれたことがファンとして非常にうれしいですし、ここまで来たら3冠はもちろんのこと牝馬全盛といわれているこの時代に牡馬の代表としてすべての世代の頂点に立ってほしいと思います。
前置きが長くなりましたが、今回は菊花賞を控えたこのタイミングで自分の中で世代のヒエラルキーを整理する意味で今年のダービーの回顧をしておこうと思います。
今回は菊花賞の出走予定メンバーについて触れます。
まず全体的なペースについてですが、大外を引いたウインカーネリアンがそれほど押さなくてもハナを取れているようにややスロー気味でした。テンの3ハロンは36.8秒と不良で行われた2011年のレースと並んでここ10年で2番目に遅いタイムです。
ただ、最も遅いタイムを記録した2017年のレースで勝ち馬レイデオロが早めに動いたのと同様にこの年も向こう正面でマイラプソディが一気に先頭に立つ競馬をしており、決して先行馬が圧倒的に有利というわけではなかったように思います。
1着.コントレイル
内枠から好発を決めてすっと番手につけ、道中は常に前に壁を作り4コーナーまではじっと脚を溜めて直線に向くとすんなりと前が開くという理想的な競馬でした。この競馬ができれば後続に3馬身の差がつくのも納得という印象でこれ以上の着差がつく展開はないように思います。この展開を作れたのも同じオーナーのコルテジアとディープボンドが周りをしっかり囲んでいたことが大きく影響しており菊花賞も同じようにうまくいくかは疑問があります。
課題としては残り400mほどから追い出すときに少し外に膨らんでいるように見えるところでしょうか。地力最上位は間違いありませんが、ひと夏を越してこのあたりがどの程度改善してきているかということが見ものです。
3着.ヴェルトライゼンデ
コントレイルの隣の枠を引き、道中は常にこの馬を前に見ながら競馬をすることができました。最後まで止まりはしていませんが、4コーナーで仕掛けていく場面ですんなりとコントレイルから離されているところを見ると瞬発力勝負ではやや分が悪いといった印象です。
ワールドプレミアが勝った去年のレースのような最後までフラットなペースを刻み続けるレースになれば台頭の余地はありそうです。
5着.ディープボンド
上でも触れたようにコントレイルのペースメーカーという意味が大きい馬でしたが、最後までタレずに掲示板を確保しました。
安定して先行する形を作れる馬で、加えて並ばれてからもう一伸びする根性を持っている馬ですから最後の直線で合わせる形を作ることができれば立ち回り次第で菊花賞もチャンスがあると思っています。
9着.マイラプソディ
1コーナーでは後方二番手も、向こう正面で仕掛けていって先頭に立つというレース全体の流れを考えると損な役回りを引き受けることになりましたが、3着と0.3差まで粘りました。
流石に上位二頭とは力差を感じる結果となりましたが、不可解といえるほどの完敗だった前2走に比べればかなり前進した内容で精神面の変化が期待できそうでした。調教もかなり本数を積んでいますし、本番よりはむしろ神戸新聞杯で狙うべきかもしれません。
11着.サトノフラッグ
有力馬の中では最も後方からの競馬となり、ペースを考えてもかなり辛い競馬になりました。とはいえ、近い位置にいた同馬主サトノインプレッサが4着まで伸びていることを考えれば正直物足りない内容といわざるを得ません。
先週のセントライト記念でも夏の上がり馬バビットをとらえきることができずに2着、レースタイムも特筆するほどのものではなく最低限の立て直しに精いっぱいで成長というレベルには達していないように感じました。過度に人気するなら軽視も考えたいところです。
何度も同じことを言うようですが、強い牡馬の登場を1競馬ファンとして待ちわびている現状です。
コントレイルが自分史上最強馬のドゥラメンテを超える活躍をしてくれることを願ってやみません。