sora tob sakanaという世界の終焉です。


このブログでは何度も紹介してきましたが、9月6日に日本青年館ホールでsora tob sakanaのラストライブ『untie』が行われました。私は幸運にもチケットを手に入れることができ、最後の瞬間を見届けることができました。3ヶ月以上前から分かっていてもいざ近づいてくるとソワソワして日常のことが手につかない、今までに経験したことのないイベントでした。
ライブから数日経ちようやく見た物を言語化出来そうな気がしてきたので今回は現地で見た感想を述べたいと思います。とはいえ4時間という長丁場の感想を一気に語る事は難しいですから、セットリストに沿って印象に残った曲をピックアップしようと思います。セットリストはTwitterで公開されていたものを貼っておきます、各自でご覧ください。




sora tob sakanaラストライブありがとうございました…。50曲マジでやったった…。メンバーのラストMCからのWALKは本当にやばかった…。 pic.twitter.com/ypjJjgigHx— リンタロウ (@rintaro0111) September 6, 2020




02.ribbon自分の中で1曲目の候補はいくつかあり、この曲もその1つでした。『ribbon』という曲名のこの曲が1曲目として選ばれるということは、ほどくという意味を持つ英語である『untie』というタイトルの持つ意味がさらに大きくなるということです。イントロを聴いた時点で『untie』が最後の披露になることを確信した人が多かったのではないでしょうか。SEでクジラを映し出した幕がこの曲の間は下りないという演出も印象的でした。幕の向こうで踊る3人の影を見て、これから始まるライブを想像して興奮しました。
03.夜空を全部曲の初めそこまでかかっていた幕がおりて、いよいよ本格的に最後のライブが始まってしまったなと実感しました。
ライブの時はまだワクワク感が勝っていてこの曲を聴いて泣くということはなかったですが、後からカラオケに行ってこの曲を聴くと涙が止まらなくなりました。照井さんが一番自信のある曲だと語っていたのも納得です。




06.Lightpool
この曲はメロディーの高低が激しく、個人的にサカナの曲の中でもトップレベルに歌うのが難しいと思っています。
披露される頻度は高くないので練習も十分ではなかったと思いますが、その歌唱力の向上に驚きました。特に最初のサビ前の「それは誰かが口ずさむ歌」という部分の声の伸びやかさは特筆すべきものがありました。




10.Brand New Blue
今回のライブ最初の泣きポイントでした。
バンドセットのライブを見たのは初めてだったのですが、バンドセットで演奏するとさらに良くなると感じた2曲のうちの1つでした。一番好きな曲を素晴らしい演奏で聴くことができて、イントロが流れた時点で涙が止まらなくなってしまいました。笑
吹いてくる風に数えきれないほどの歌を感じ、その歌を聴くとあなたのことを思う、でも二度と同じ風に触れることはできない… なんて幻想的でさわやかな歌詞でしょうか。
ああ、思い出しただけでも泣けてきました。




13.シューティングスターランデブー
先日の定期公演でTONTONさんが気合を入れてVJを作ったと話されていたので注目していました。
オサカナの曲で可愛いに全振りした曲は片手で数えるほどしかないので貴重ですね。
間奏の飛び跳ねながら円を描く動きが後ろのVJともマッチしていて、非常にかわいらしかったです。




21.ささやかな祝祭
間奏でバンドメンバーさん一人一人のソロパートと紹介がありました。その中でも先月の横浜でのライブでキーボードの森谷さんのトークを見ていたので、彼の演奏している時とのギャップが印象的でした。あ、楽器演奏しているときはこんなにかっこいいのか…と。笑
その後のMCでのバンドメンバーさんとの絡みも含めて和やかな気持ちになれる曲でした。




22.発見
入りの部分でふぅちゃんが恐らくミスをしてしまって、このままズルズル行くかなと思ったところでまなちゃんがタイミングも音程もバッチリ合わせてきてそこから一気に曲が締まった印象でした。
何度聞いても最初の部分は難しいのに前の人のミスを引きずらずしっかりと軌道修正をしていく能力を持ち合わせているまなちゃんはやはり只者ではないと思わされた瞬間でした。もともとピッチの合わせ方などはサカナでも一枚抜けて上手いと思っていましたが、成長とともにさらに磨きがかかったようですね。




28.クラウチングスタート
個人的にuntieで再録された曲の中で一番気に入っているのがこの曲です。
このライブのMCでも語っていたように決められた世界観に忠実に従って歌うのがサカナの特徴ですが、この曲のAメロの部分を聴いたときメンバーの自我とこの曲の世界観が絶妙にマッチしているように感じました。「sora tob sakana」に収録されているバージョンと「deep blue」に収録されているバージョンを聴き比べてもらえればその差は歴然としていると思います。
今回のライブでもふぅちゃんのまっすぐな声質が構成するAメロが素晴らしく映えていました。DVDが届いた時には必ず見返したい一曲です。




32.帰り道のワンダー
アコースティックパートで披露された他の3曲はアコースティックで披露する可能性が高いと思っていたのですが、この曲は元気いっぱいに踊るメンバーが印象的な曲だったので驚きました。
これは完全に妄想ですが、アコースティックバージョンのこの曲を大人っぽく歌う3人が元気よくこの曲を歌っていた昔の自分たちを隣でやさしく見守っているように感じられてきて少し感動していました。こんな歌い方もできるようになったということが3人が次のステージに進むべきタイミングに来ていたということの表れなのかなとも思います。




38.夏の扉
このライブ2回目の泣きポイントでした。普段からフィルムのVJが流れているこの曲ですが、今回はそのフィルムに歴代の曲のVJが流れていて涙腺が崩壊しました。
正直この曲は解散が発表されるまでは個人的に目立たない曲だと思っていたのですが、この最後の夏で一気に思い出深い曲になりました。
今年の夏は「夏の扉 もう二度とない季節と微かに気が付いた 君が笑った ただそれだけ 見つめている まぶしい日差しが 夏の扉を開けて」というサビの歌詞が染みた、もう二度とない夏でした。




39.ありふれた群青
MCでもこの曲が二度目の披露であることが言及されていましたが、何となくライブで新鮮な感じがしました。
そういう背景もあってか、まなちゃんが1番で間違えて2番の歌詞を歌ってしまうミスをしてしまったようです。人間少しのミスはご愛敬、私はまなちゃんがライブ中にたまにする困った顔可愛くて大好きです。笑 
というか4時間という長丁場で大きなミスが2回しかないってすごいことですよね。少ないリハーサルでここまで仕上げてきた3人とスタッフに改めて拍手したい気持ちです。




41.暇
録音された音声をメンバーが選択して流すというだれも予想できなかったトリッキーな披露の仕方になりました。玲ちゃんパートを他のメンバーが喋ることは難しいでしょうからやむを得ないですね。
普通の曲の中に入れてもなんか違うな…と思っていたのでMCの途中で突然始まるというのも良かったと思います。森谷さんのキーボードが音を奏で始めた時のワクワクは忘れられません。




46.信号
バンドセットでは最初で最後の披露になったこの曲ですが、演出も含めて今回のライブで一番印象に残っています。
白い煙を用いた演出で、紫がかった光と相まって世界の終末をイメージしたMVをそのままステージに作り出したようでした。
サカナの到達点と呼ぶにふさわしいパフォーマンスでした。




49.WALK
最後のMCでもしかしたらメンバーが泣いてしまうのではないかという私の野暮な推測をよそに3人は最後まで笑顔でファンへの感謝を語ってくれました。最後まで一切しおらしい空気を作らなかった3人のアイドルとしてのプロ根性には脱帽です。
その後曲が始まると明るい別れの曲であるはずのこの曲で涙が止まらなくなりました。大サビで3人が見つめあいながら笑っている姿がもう見られないという事実は私にとってあまりに重かったようです。
MCでは楽しい空気を作りながら、曲が始まるとファンの心を揺さぶりまくるというのが最後までオサカナらしいなと思いました。




50.untie
WALKが終わった後拍手がしばらく鳴りやまなかったのが印象的でした。体感では30秒ほど鳴り続いていたように記憶しています。最後の曲が近づいていることを予感し、できるだけその瞬間を引き延ばしたい一心で私も拍手をし続けました。
拍手が止んだ後、案の定最後のこの曲が始まりました。正直この数分間のことはよく覚えていません。歌詞のあるパートが終わると白い煙がステージを包み、いつの間にか3人とバンドメンバーさんが消えていたということだけが断片的な記憶です。
拍手が鳴りやまなかったWALKと対照的にこの曲が披露された後しばらく会場は沈黙に包まれました。その場にいたすべての人が目の前で起こったことをすぐには呑み込めず呆然としていたようでした。あれだけのパフォーマンスをしていながら演者たちは拍手が起きないことにゲラゲラ笑っていたようで、これまでに踏んできた場数の違いを感じました。




どの曲にも感想はありますが、あまりに長くなってしまうので特に印象に残った15曲を紹介しました。




人間というのは自分の力ではどうしようもないことに直面した時、何らかの理由をこじつけで合理化しようとするものだと私は思っています。今回の場合、解散を決めたということは3人にアイドルを続けるモチベーションが無くなった(本人たちが前向きな解散といっている以上事実とは違いますがこじつけなので何でもありです)ということだから今後今以上のパフォーマンスを見ることはできないと自分に言い聞かせようとしていました。
しかし、今回のパフォーマンスは確実にこれまでの最高を塗り替えるものでした。untieを披露し終わった後の沈黙が何よりの証拠でしょう。ライブが始まる前メンバーと運営は最後にふさわしい最高のライブを見せることを約束していましたが、完璧なものを見せられたからこそオサカナの解散を自分の中で合理化できずより悲しみに暮れてしまうというのは何とも皮肉な話です。




ただ、現実世界の解散を悲しむ自分とは対照的にサカナの曲の世界観に没入したもう一人の自分はその世界の終焉に妙に納得しているところがあります。アルバムに収録された新曲をラストライブまで1度も披露しないというのはアイドルとしては異例のことだと思いますが、そのことによってuntieを聴く瞬間がsora tob sakanaというアイドルが紡ぎだしてきた世界の終わりの瞬間だという覚悟がもう一人の自分の中でできていたのだと思います。
それを考えると今回のライブの締め方というのはオサカナの作り出した世界を終わらせる前に、そこに没入したファンを責任をもって現実の世界に戻してあげるというオサカナにかかわるすべての人の誠意だったのではないでしょうか。これまで散々解散を惜しんできた私が言うのはおかしな話ですが、この体験は解散というタイミングでしかできないことだと思いますし、そういう意味では初めて解散を見届けるグループがオサカナで本当によかったです。




今日であのライブから4日が経ちました。
それぞれの道へ力強く踏み出した3人を支えるためにもいつまでも過去を振り返ってうじうじしている場合ではありません、後ろを振り向かず前だけを見て応援しようと思います。
もしオサカナが恋しくなっても、6年間で作り出した50曲の楽曲がさらに後ろから私たちを支えてくれるはずです。

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